○横須賀市犯罪被害者等基本条例

令和3年12月17日

条例第75号

横須賀市犯罪被害者等基本条例をここに公布する。

横須賀市犯罪被害者等基本条例

日々、安心して暮らすことは誰もが当たり前に享受すべきことであるが、犯罪被害はその当たり前を突如として奪う。

人は、ひとたび犯罪に遭うと身体的、精神的そして経済的影響を被り、それらの影響は被害者本人にとどまらず家族や関係者にも及び、かつ、その影響が解消されるまでに長期間を要することがあり、さらには解消されない場合もある。

また、犯罪によって直接被る影響に加え、犯罪捜査や裁判の過程における関係者からのあたかも被害者に責任があるかのような誹謗や中傷、報道機関による過剰な取材や憶測による報道、インターネットを用いた事実と異なる情報の氾濫など、二次被害による影響も多々ある。

これまで、我が国における犯罪被害者本人やその家族等への対応は、十分ではなかった。

当事者等の長年にわたる努力によって、被害者支援に関する法制化等は実現されてきたが、未だ十分な対応とは言えない状況である。

もとより、被害者支援についてはその居住地の如何に関わらず、誰もに等しく行われるべきものと考える。

そのため、本市議会は、地方自治法に基づき国等への不断の働き掛けを行い、あまねく支援が講じられる社会を目指す。

そして、本市は、刑法等に定められる犯罪にとどまらず、法律上犯罪と認められていない場合についても対象とし、長期にわたって支援の手を差し伸べ、すべての犯罪被害者等に寄り添う横須賀の実現を目指して、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)に基づき、犯罪被害者等のための施策に関する基本理念を定め、市、市民等及び事業主等の責務を明らかにして、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図るとともに、安心して暮らせる社会を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 犯罪等 犯罪及びこれに準ずる心身に影響を及ぼす行為をいう。

(2) 犯罪被害者等 犯罪等により害を被った者、その家族(害を被った者が死亡した場合は、遺族をいう。以下同じ。)及び関係者であって、市内に居住し、勤務し、又は在学する者をいう。

(3) 二次被害 犯罪被害者等が犯罪等によって被った害(一次被害)を原因として他者(市民等、マスメディア関係者、行政、司法関係者、インターネットの利用者等)からの偏見、無理解、差別等により被るプライバシーの侵害、名誉の毀損、精神的苦痛、心身の変調、経済的損失等の被害をいう。

(4) 再被害 犯罪被害者等が当該犯罪等の加害者から再び受ける被害をいう。

(5) 市民等 市内に居住する者、勤務する者、在学する者及びそれらの者が市内において組織する団体をいう。

(6) 事業主等 市内において事業活動を行う者、その団体及びその関係者をいう。

(基本理念)

第3条 すべての犯罪被害者等は、人としての尊厳が尊重され、その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利を有する。

2 犯罪被害者等のための施策は、被害の状況、犯罪被害者等が置かれている状況及びその他の事情に応じて適切に講じられるものとする。

3 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が安心して暮らすことができるようになるために必要な支援を途切れることなく受けられるように講じられるだけでなく、安心して暮らすことができるようになった後においても、二次被害及び再被害を防止し、軽減するために必要な支援を適切かつ継続的に受けることができるように講じられるものとする。

(市の責務)

第4条 市は、犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 市は、前項に定める施策の策定及び実施に当たっては、国、県、他の地方公共団体、関係機関・団体等及びその他関係する者との連携及び協力に努めるものとする。

(市民等の責務)

第5条 市民等は、犯罪被害者等の尊厳、置かれている状況及び支援の必要性についての理解を深めるよう努めるものとする。

2 市民等は、犯罪被害者等の尊厳を守り、二次被害を生じさせないように十分に配慮するとともに、犯罪被害者等を孤立させないように努めるものとする。

(事業主等の責務)

第6条 事業主等は、犯罪被害者等の尊厳、置かれている状況及び支援の必要性についての理解を深めるとともに、犯罪被害者等が安心して暮らすため、就労及び勤務条件並びにその他必要な各種手続について、十分に配慮するよう努めるものとする。

2 事業主等は、犯罪被害者等に二次被害を与えることのないよう十分に配慮するよう努めるものとする。

第2章 基本的支援

(総合支援体制の整備)

第7条 市は、他の地方公共団体、関係機関・団体等及びその他の関係する者と連携・協力して、犯罪被害者等が直面している様々な問題の解決のために必要な支援を受けられるよう総合的な支援体制を整備する。

(総合支援窓口の設置)

第8条 市は、この条例に定める支援を総合的に実施するために窓口を設置し、犯罪被害者等の支援に必要な識見を有する職員を配置するよう努めるものとする。

(相談、情報の提供等)

第9条 市は、犯罪被害者等が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようにするため、二次被害及び再被害を含め犯罪被害者等が直面する様々な問題についての相談に応じて、必要な情報の提供及び助言を行うとともに支援に関する総合的な調整を行い、犯罪被害者等が被った被害の程度等に応じて次条から第16条までに規定する支援を行うものとする。

2 市は、犯罪被害者等が二次被害及び再被害を受けることがないよう、プライバシー及び名誉の保護に努め、犯罪被害者等の個人情報については、厳に適正に取り扱うものとする。

(日常生活支援)

第10条 市は、他の地方公共団体及び関係機関・団体等と連携し、日常生活の維持のための必要な支援を行う。

(心理カウンセリング等)

第11条 市は、犯罪被害者等が心身に受けた影響から回復するために心理カウンセリングの受診等ができるよう、必要な支援を行う。

(居住の安定)

第12条 市は、犯罪等により従前の住居に居住することが困難になった犯罪被害者等に対し、居住の安定を図り、犯罪被害者等が二次被害及び再被害を受けることがないようにするため、一時避難場所の提供や転居等に必要な支援を行う。

(雇用の安定)

第13条 市は、犯罪被害者等の雇用の安定を図るため、関係機関・団体等と連携し、その犯罪被害者等が置かれている状況についての事業主の理解を深め、犯罪被害者等の事情に配慮した職場環境の整備等が促進されるよう必要な支援を行う。

(見舞金の支給)

第14条 市は、犯罪被害者等の生活の安定に資するため、犯罪被害者等に対し、見舞金を支給するものとする。

(損害賠償請求の支援)

第15条 市は、犯罪被害者等に対する加害者からの賠償が迅速かつ適正に行われるようにするため、犯罪被害者等の行う損害賠償請求に関して必要な支援を行う。

(刑事手続参加についての支援)

第16条 市は、犯罪被害者等がその被害に係る申告及び刑事手続への参加をするために必要とする情報の提供、家族の状況に応じた付添い等必要な支援を行う。

(市民等以外の犯罪被害者等への支援)

第17条 市は、第2条第2号に定める犯罪被害者等以外の者が市内で起きた犯罪等により害を被った場合には、その者が居住する市区町村と連携・協力するものとする。

2 市は、前項の市区町村において、犯罪被害者等に対する具体的な支援制度がない場合は、国及び都道府県の制度の利用を勧めるよう当該市区町村に働き掛けるものとする。

第3章 支援体制の整備

(人材の育成等)

第18条 市は、犯罪被害者等が適切かつ十分な支援を受けることができるよう、市の職員及びその他の関係する者に対し、犯罪被害者等の支援の必要性についての意識を高め、必要な能力を身につけるための研修を受講させる等必要な施策を行う。

(関係民間団体に対する援助)

第19条 市は、犯罪被害者等の支援における関係民間団体の役割の重要性に鑑み、その活動の促進を図るため、活動に必要な情報の提供及び助言その他必要な援助を行う。

(市民等の犯罪被害者等への理解の増進)

第20条 市は、市民等に対し、広報啓発活動等を通じて、犯罪被害者等が置かれている状況及び尊厳、犯罪被害者等のプライバシー及び名誉の尊重、二次被害及び再被害の防止、日常生活への配慮の重要性等についての理解を深めるために必要な施策を行う。

(意見の反映)

第21条 市は、犯罪被害者等のための施策を策定し、実施するに当たっては、犯罪被害者等の意見を聴取するなどして適正に反映させるよう努めるものとする。

(支援を行わないことができる場合)

第22条 市は、犯罪被害者等が犯罪等を誘発した場合その他の犯罪被害者等の支援を行うことが社会通念上適切でないと認められる場合は、犯罪被害者等の支援を行わないことができる。

第4章 雑則

(その他の事項)

第23条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

(施行期日)

この条例は、令和4年4月1日から施行する。

横須賀市犯罪被害者等基本条例

令和3年12月17日 条例第75号

(令和4年4月1日施行)