○横須賀市がん克服条例

平成30年10月12日

条例第75号

横須賀市がん克服条例をここに公布する。

横須賀市がん克服条例

誰もが健康的で幸せな生涯を送りたいと願っている。それを阻む原因は様々だが、その1つにがんが挙げられる。

がんは日本人の最大の死亡原因で、生涯において2人に1人ががんにり患し、3人に1人ががんにより死亡している。

本市においても同様で、近年の死亡原因の第1位はがんによるものであり、全死亡原因の約3割を占めている。誰もががんにかかる可能性があり、特別な病気ではなくなっている。がんと闘病することやがんにより命を失ってしまうことは、本人及びその家族だけではなく、地域社会及び本市にとっても重大な問題となっている。

がんについての研究が進み、細菌やウイルスの感染を原因とするものや生活習慣によるものなど、徐々に原因が明らかになってきている。特に、細菌やウイルスの感染は、男性では喫煙に次いで2番目に、女性では最も発がんに大きく寄与する因子となっており、子宮頸がんの発がんと関連するヒトパピローマウイルス、肝がんと関連する肝炎ウイルス、ATL(成人T細胞白血病)と関連するヒトT細胞白血病ウイルス1型、胃がんと関連するヘリコバクター・ピロリ等が挙げられる。その中でも原因が明らかな胃がんの早期予防については、ピロリ菌除菌など、義務教育期間中の児童・生徒等の若年期からの対策が望まれる。

このような現状に鑑み、がんに対する知識を深め、がん予防のための生活習慣の改善やがんの早期発見のための検診受診等、さらにはがん患者の支援なども含めた総合的ながん対策を市民とともに推進することを目指し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、がんを克服することを目指し、がん対策基本法(平成18年法律第98号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ、市、がんの予防及び早期発見の推進又はがんに係る医療(以下「がん医療」という。)に従事する者(以下「保健医療関係者」という。)、市民及び事業者の責務を明らかにし、がんの予防及び早期発見の推進を定めることにより、全ての市民が科学的知見に基づく適切ながん医療を受けられるようにするための総合的ながん対策を市民とともに推進することを目的とする。

(市の責務)

第2条 市は、がん対策に関し、国、県、医療関係団体、医療機関、がん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体との連携を図りつつ、本市の地域の特性に応じたがん対策を策定し、及び実施するものとする。

2 市は、がんに関する正しい理解及び関心を深めるための普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。

(保健医療関係者の責務)

第3条 保健医療関係者は、市が講ずるがん対策に協力するよう努めなければならない。

(市民の責務)

第4条 市民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣、身体に悪影響を及ぼす危険のある生活環境等がんのり患の直接的又は間接的な要因の排除のための正しい知識を持ち、がんの予防に注意を払い、がん検診を受けるよう努めるほか、がん患者に関する理解を深めるよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第5条 事業者(市内において事業活動を行うものをいう。以下同じ。)は、市が実施するがん対策に関する施策に積極的に協力するとともに、従業者ががん検診等の受診によりがんを予防し、又は早期に発見することができる環境の整備に努めなければならない。

2 事業者は、従業者又はその家族ががんにり患した場合であっても、当該従業者が勤務を継続しながら治療し、療養し、又は看護することができる環境の整備に努めなければならない。

(がん対策推進計画の策定)

第6条 市は、この条例の目的を達成するため、具体的な、がん予防、早期発見、がん医療の強化及び研究、情報収集、緩和ケア及び在宅医療の充実並びに全般的ながん患者等の支援等の施策として、横須賀市がん対策推進計画(以下「計画」という。)を策定するものとする。

2 市は、前項の計画に関し、6年ごとに区分した期間における各期間の末日の属する年度において、この計画の実施状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

(がんの予防の推進)

第7条 市は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響に関する普及啓発その他のがんの予防に関する施策を講ずるものとする。

2 市は、感染により発症するがんについて、除菌、ワクチン接種等による対策を講ずるとともに、性別、年代等に係る特定のがんについては、その予防に関する啓発及び知識の普及等の具体的な予防策を講ずるものとする。

(がん克服に関する研究及び施策の実施)

第8条 市は、関係医療機関等(地域がん診療連携拠点病院、地域の病院、医師会などをいう。以下同じ。)と連携し、ピロリ菌除菌等のがん克服施策事業について研究及び実施を行う。

(がんの早期発見の推進)

第9条 市は、関係医療機関等と連携し、がんの早期発見に資するよう、がん検診の方法等の検討、がん検診の事業評価の実施、がん検診に携わる医療従事者に対する研修の機会の確保その他のがん検診の質の向上等を図るために必要な施策を講ずるとともに、市民のがん検診の受診率の向上に資するよう、がん検診に関する普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。

(がん医療に関する情報の収集及び提供)

第10条 市は、全ての市民が科学的知見に基づく適切ながん医療に関する情報を得られるよう、国、県、医療機関等と連携し、情報の収集及び提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 市は、地域がん診療連携拠点病院と協力し、がんの本態解明、革新的ながんの予防及び診断に関する方法並びに免疫療法その他の革新的ながんの治療に関する方法の開発その他の先進的な医療の導入に取り組んでいる各医療機関の情報収集に努め、その成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。

3 市は、がん登録(がん患者のがんのり患、診療、転帰等の状況に関する情報を収集し、分析するための制度をいう。)の情報の利用について、市のがん対策に有効な方策が行えるよう、関係機関その他の必要な組織と連携を進めるものとする。

(がん医療の水準の向上)

第11条 市は、がん患者がそのがんの状態に応じたがん医療を受けることができるよう、国、県及び専門的ながん医療を提供する医療機関その他の医療機関と連携協力し、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(1) 国立がん研究センター、神奈川県立がんセンター、地域がん診療連携拠点病院その他の医療機関との連携の強化

(2) 手術療法、放射線療法及び化学療法を効果的に組み合わせた治療法並びに高度で先進的な医療技術の普及啓発

(緩和ケアの推進)

第12条 市は、関係医療機関等と連携し、がん患者の身体的な苦痛並びに精神的及び社会的な不安の軽減等を目的とする医療、看護その他の行為(以下「緩和ケア」という。)の充実を図るため、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(1) 緩和ケア病棟等の情報提供

(2) 緩和ケアに関する専門的な知識及び技能を有する医療従事者の育成

(3) がんにり患していると診断されたときからのがん患者の状況に応じた緩和ケアの推進

(4) 居宅で緩和ケアを受けることができる体制の整備の支援

(在宅医療の充実)

第13条 市は、関係医療機関等と連携し、がん患者がその居宅において療養できる体制の整備のため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) がんに係る在宅医療に従事する医師、看護師、その他の医療従事者及び介護従事者の育成及び確保

(2) 医療機関、介護サービス事業者その他がんに係る在宅医療に関わる団体等の連携の強化

(3) 在宅医療を希望するがん患者及びその家族などに対する情報提供、相談支援等の充実

(4) 前3号に掲げるもののほか、がんに係る在宅医療に関し必要な施策

(患者等の支援)

第14条 市は、関係機関等(がん相談支援センター、がん患者やその家族を支援する民間団体などをいう。)と連携し、がん患者の療養生活の質の維持向上及び精神的、社会的、経済的不安、その他の負担の軽減に資するために、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(1) がん患者及びその家族又は遺族に対する相談体制等の充実

(2) がん患者等に対する就労に関する支援

(3) がん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体が行うがん患者の療養生活及びその家族の活動に対する支援

(がん教育の推進)

第15条 市は、児童及び生徒ががんに関する正しい知識を持つとともに、がんの予防、早期発見等の重要性について理解を深めることができるよう、教育機関及び保健医療関係者その他の関係団体と連携し、がんに関する教育を推進するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(市民運動)

第16条 市は、保健医療関係者及びがん患者、その家族等で構成される民間団体その他の関係団体が行う、市民を対象とするがんの予防及び早期発見を推進する活動を支援するものとする。

(施行期日)

1 この条例は、平成31年4月1日から施行する。

(見直し規定)

2 市長は、この条例施行の日後、法等が変更されるごと又は少なくとも6年ごとに、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

横須賀市がん克服条例

平成30年10月12日 条例第75号

(平成31年4月1日施行)