○地球を守れ 横須賀ゼロカーボン推進条例

令和3年9月21日

条例第59号

地球を守れ 横須賀ゼロカーボン推進条例をここに公布する。

地球を守れ 横須賀ゼロカーボン推進条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第8条)

第2章 地球温暖化対策に関する施策の基本方針(第9条)

第3章 地球温暖化対策に関する施策等(第10条―第17条)

第4章 雑則(第18条)

附則

三方を海に囲まれるとともに丘陵地や斜面地などのみどり豊かな横須賀の自然環境は、市民にとっての大きな魅力となっています。

しかし、近年、世界各地において生じている地球温暖化に起因するとみられる猛暑や短時間豪雨、農作物の不作、生態系の変化など、人々だけでなく地球全体に深刻な被害をもたらす気候変動の影響は、本市においても重大な脅威となっています。

このような危機的状況の中、国際条約であるパリ協定の発効により、世界は脱炭素社会の実現に向けて動き出しました。脱炭素社会への移行は、世界が一丸となって取り組むべき課題であり、世界の一員として横須賀に生きる私たちの使命でもあります。

これまで本市では、計画を策定し、低炭素社会の構築や気候変動への適応を推進してきたほか、令和3年1月には、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロとすることを目指す姿勢を示しました。

横須賀が誇るべき豊かな環境を未来へ継承し持続させていくためには、低炭素社会から脱炭素社会へ、これまで以上に大胆な変革が必要不可欠です。市民、事業者、市民団体、行政等のあらゆる主体が危機感を共有し、社会全体が二酸化炭素排出量実質ゼロとなる生活様式及び事業活動へと生まれ変わるとともに、長期に渡って地球環境に影響を及ぼすと考えられている気候変動に柔軟に適応していくことが求められます。

ここに、豊かな自然環境、良質な生活環境及び地域経済振興が共存した脱炭素社会への移行に向けた施策を実効性のあるものとし、市民、事業者、市民団体、行政等のあらゆる主体の責務に基づく役割を明確にし、併せて地球温暖化対策に不退転の覚悟で取り組むため、この条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、脱炭素社会への移行に向けた温室効果ガスの排出量の削減等及び気候変動適応策(以下「地球温暖化対策」という。)の推進について、行動の原則を基本理念として定め、市民、事業者及び市民団体(市民、事業者その他の団体又はこれらの者で組織する団体をいう。以下同じ。)並びに市の責務を明らかにするとともに、地球温暖化対策の基本となる事項を定め、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進することにより、脱炭素社会を実現し、自然環境の保全、生活の安定及び地域経済の発展を図り、もって現在及び将来の市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(他の条例との整合)

第2条 市は、この条例が本市の地球温暖化対策に関する政策の基本的位置を占めるという認識に基づき、その運用に当たっては、この条例に関係し、かつ、基本事項を定める他の条例と相互に整合するように調整を図るものとする。

(定義)

第3条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 二酸化炭素排出量実質ゼロ 人の活動に伴って発生する二酸化炭素の排出の量と森林等の吸収源による二酸化炭素の除去の量との均衡がとれた状態をいう。

(2) 脱炭素社会 二酸化炭素排出量実質ゼロを達成し、かつ、生活の質の向上及び持続可能な経済の発展が可能となった社会をいう。

(3) 温室効果ガス 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)第2条第3項に規定する温室効果ガスをいう。

(4) 温室効果ガスの排出量の削減等 温室効果ガスの排出量の削減並びに吸収作用の保全及び強化等地球温暖化の防止を図るための施策又は取組みをいう。

(5) 再生可能エネルギー エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律第72号)第2条第3項に規定する再生可能エネルギー源を利用して得ることができるエネルギーをいう。

(6) 気候変動適応策 気候変動(地球の大気の組成を変化させる人の活動に直接又は間接に起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生ずるものをいう。以下同じ。)の影響に適切に対処するための施策又は取組みをいう。

(基本理念)

第4条 脱炭素社会への移行に向けた地球温暖化対策の推進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

(1) 日常生活及び事業活動において、二酸化炭素排出量実質ゼロが達成されるよう、社会経済システムの転換を図ること。

(2) 市民、事業者及び市民団体並びに市が、脱炭素社会を実現することの重要性を認識し、それぞれの責務を自覚して積極的に取り組むこと。

(3) 温室効果ガスの排出量の削減等を図るとともに、社会及び経済の課題の解決に貢献すること。

(4) 気候変動適応策の推進に資する地域に存する多様な資源を有効に活用するとともに、気候変動適応策を通じ、地域における課題の解決に貢献すること。

(市民の責務)

第5条 市民は、前条に規定する基本理念(以下単に「基本理念」という。)に基づき、日常生活において、温室効果ガスの排出量の削減等のために必要な措置を積極的に講じて、脱炭素社会への移行のために役割を果たすとともに、他の者が実施する地球温暖化対策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念に基づき、事業活動において、温室効果ガスの排出量の削減等のために必要な措置を積極的に講じて、脱炭素社会への移行のために役割を果たすとともに、他の者が実施する地球温暖化対策に協力するよう努めなければならない。

(市民団体の責務)

第7条 市民団体は、基本理念に基づき、その活動において、温室効果ガスの排出量の削減等のために必要な措置を積極的に講じて、脱炭素社会への移行のために役割を果たすとともに、他の者が実施する地球温暖化対策に協力するよう努めなければならない。

2 環境の保全を図る活動を行うことを主たる目的として組織された市民団体は、その活動を通じて、地球温暖化対策に関する市民及び事業者の理解が深まり、これらの者の地球温暖化対策に対する参加と協働が促進される取組みを行うよう努めなければならない。

(市の責務)

第8条 市は、基本理念に基づき、脱炭素社会への移行のための総合的かつ計画的な地球温暖化対策を策定し、及び実施するものとし、地球温暖化対策の策定及び実施に当たっては、地球温暖化対策に関する活動への市民、事業者及び市民団体の参加及び協力を促し、これらの意見を適切に反映させるものとする。

2 市は、市民、事業者及び市民団体が脱炭素社会への意識及び関心を高め、地球温暖化対策に積極的に取り組むことができるよう、社会的気運が醸成されるための取組みに努めるとともに、必要な措置を講ずるものとする。

3 市は、市の事務及び事業に関し、地球温暖化対策のために必要な措置を講ずるものとする。

第2章 地球温暖化対策に関する施策の基本方針

第9条 市は、基本理念に基づき、次に掲げる事項を基本として、地球温暖化対策の具体的な施策を策定し、及び実施するものとする。

(1) 再生可能エネルギーの普及やエネルギーの使用の合理化の促進、温室効果ガスの排出量のより少ない移動手段の選択等、温室効果ガスの排出量の削減に関する施策を推進すること。

(2) 二酸化炭素の吸収作用及び固定作用を有する森林や藻場等の保全及び活用に関する施策を推進すること。

(3) 地域の特性を踏まえ、気候変動の影響による被害の軽減又は回避に関する施策を推進すること。

第3章 地球温暖化対策に関する施策等

(地球温暖化対策実行計画)

第10条 市長は、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に実施するため、脱炭素社会への移行に向けた地球温暖化対策に関する計画(以下「地球温暖化対策実行計画」という。)を策定するものとする。

2 地球温暖化対策実行計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。

(1) 地球温暖化対策実行計画の実施期間、温室効果ガスの総排出量の削減目標その他地球温暖化対策に関する基本方針

(2) 温室効果ガスの排出量の削減等に関する具体的な施策

(3) 気候変動適応策

(4) 前3号に掲げるもののほか、地球温暖化対策を推進するために必要な事項

3 市長は、地球温暖化対策実行計画を策定し、又は変更しようとするときは、市民、事業者及び市民団体の意見を反映するよう努めるとともに、環境基本条例(平成8年横須賀市条例第26号)第22条第1項に規定する横須賀市環境審議会の意見を聴くものとする。

4 市長は、地球温暖化対策実行計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

5 市長は、本市の区域内における温室効果ガスの総排出量並びに地球温暖化対策の実施状況及びその評価について、年次報告書を作成し、公表するものとする。

(再生可能エネルギーの普及の促進)

第11条 市は、再生可能エネルギーの利用の拡大を図るため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 再生可能エネルギーの導入を促進するための施策

(2) 再生可能エネルギーである電気又は再生可能エネルギーである電気に相当するものとして環境価値が付与された電気の購入を促進するための施策

(3) 再生可能エネルギーに相当するその他のエネルギーの利用を促進するための施策

(エネルギーの使用の合理化)

第12条 市は、日常生活及び事業活動に伴うエネルギーの使用の合理化(一定の目的を達成するためのエネルギーの使用に際して、より少ないエネルギーで同一の目的を達成するために、徹底的に効率の向上を図ることをいう。)を促進するため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) エネルギーの消費量がより少ない電気、ガスその他のエネルギーに係るエネルギー消費機器の優先的な購入を促進するための施策

(2) エネルギー消費機器及び水道水の適切な使用により、これらの使用に伴うエネルギーの消費量を抑制するための施策

(3) エネルギー消費量がより少ない役務を優先的に利用するための施策

(4) 環境マネジメントシステム(環境に配慮した事業活動を自主的に進めていくための目標を設定し、当該目標を達成するための取組みを推進するための仕組みをいう。)を事業者に普及させるための施策

(移動手段の選択等による温室効果ガスの排出量の削減)

第13条 市は、移動手段の選択等による温室効果ガスの排出量の削減を促進するため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 自動車等(道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第2条第2項に規定する自動車及び同条第3項に規定する原動機付自転車をいう。以下同じ。)を使用する者の公共交通機関、自転車及び徒歩その他温室効果ガスの排出量の削減に資する移動手段の利用への転換を促進するための施策

(2) 温室効果ガスを排出しない自動車等又は温室効果ガスの排出量が相当程度少ない自動車等の導入を促進するための施策

(3) 電動車等(電気を全部又は一部の動力源とし、動力源として用いる電気を外部から充電する機能を備えている自動車等をいう。)にエネルギーを供給する設備の設置を促進するための施策

(4) 自動車等を使用する者が環境に配慮した運転を行うことを促進するための施策

(温室効果ガスの吸収源の利用)

第14条 市は、前3条に規定する温室効果ガスの排出量の削減に関する施策を積極的に実施し、及び二酸化炭素排出量実質ゼロの達成に資するため、市民、事業者及び市民団体の森林や藻場の二酸化炭素の吸収作用及び固定作用に関する理解が深まるよう取り組むとともに、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 森林の適切な保全及び整備並びに市街地における緑化及び農地の適切な保全を推進するための施策

(2) 藻場の再生、保全及び活用等を推進するための施策

(3) 地球温暖化対策により削減され、又は吸収された温室効果ガスの量を、他の者の温室効果ガスの削減の量とみなすことができるようにする取引を促進するための施策

(気候変動への適応)

第15条 市は、次に掲げる気候変動適応策を重点的かつ効果的に推進するものとする。

(1) 気候変動の影響を踏まえた水害その他の自然災害の予防及び市民啓発を図る施策

(2) 気候変動の影響を踏まえた熱中症の予防及び市民啓発を図る施策

(3) 気候変動の影響に関する情報の収集並びに効果的な気候変動への適応に関する調査及び研究

(広域的な連携)

第16条 市は、市民、事業者及び市民団体、国、他の地方公共団体及び関係行政機関並びに大学その他の教育研究機関と広域的に連携し、及び協働して、地球温暖化対策の効果的な推進に努めるものとする。

(財政上の措置)

第17条 市は、脱炭素社会への移行に向けた施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第4章 雑則

(この条例の見直し)

第18条 この条例は、その運用状況、地球温暖化対策に係る技術水準の向上、社会経済情勢の変化等を勘案し、この条例施行の日以後5年以内に見直しを行うものとし、以後5年以内ごとに見直しを行うものとする。

この条例は、令和3年10月1日から施行する。

地球を守れ 横須賀ゼロカーボン推進条例

令和3年9月21日 条例第59号

(令和3年10月1日施行)